ある日のこと。 シイばあさんがいつものように山道を歩いていると、ぱらぱらと頭の上から何やら降ってきました。あらら、なんとそいらじゅうの竹という竹が花をつけ、種が降ってくるではありませんか。慌ててもどり、隣のおばあさんに教えました。
すると、「竹に花なぞ咲いた日にゃあ、ろくなことが起きないぞぇ、花の実は種とならぬという。ああ、今に地震があるか、大水か、日照りか」と恐れました。みるみる噂が広まり、村人そろって恐れたのでご飯も喉に通りません。とうとうみんな次々やせ細り、病で伏してしまいました。
ですから、隣村では「竹の花が咲いて、皆やまいで倒れた」と忌み嫌いました。
それでも、シイばあさんは考えました。「竹が花を付けるとは新しきことの前触れとしよう。確かに笹葉は枯れていく。それで良い」
倒れた竹を集めては、炭などにして飯を炊いては近所の人々に届けました。「なあ、そう悪くなかろう。恐れるなよぅ」とシイさんは村人に言ったことでした。
そうしているうち次の年には、若竹がそこらを青々と覆ったのでありました。誰にとってもめでたし々。 by アント